不動産価格の上昇要因について

不動産を購入し、価値が上がるのか、価値が下がるのかは大変重要な問題である。特に、不動産価格の下落はリスクと考える方が多く、逆に不動産価格の上昇を狙って不動産の購入を検討する方も多いだろう。

そこで、今回は不動産価格の上昇の要因について考えてみる。

Ⅰ不動産評価額(不動産価格)の決定方法について

日本における不動産価格については需要と供給によって決定される。つまり、物件の価格は市場が判断する。しかし、不動産の評価は市場では決定されず、専門家(不動産鑑定士)のみが評価額を算出することが出来るのである。

不動産は固有なものである。同じ物件は二つとして存在しない。よって、買主、売主双方の事情によって不動産価格は変動する。対して、不動産評価とは客観性が求められ、買主、売主の事情等を排除して求められる金額である。

それでは、不動産評価ではどのような部分に着目して、不動産価格を決定するのであろうか。それは3つの手法によって算出する。

①原価法

原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価 について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である

②取引事例法

取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、 これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域 要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これに よって対象不動産の試算価格を求める手法である

③収益還元法

収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在 価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である

この3つの手法を用いて不動産の評価額を決定する。

この不動産評価額は、国が地価公示として、地価を公示する場合や金融機関の融資の際、裁判所等で採用される金額であり、こうした金額は間接的に市場に出回っている不動産価格にも影響をおよぼす。

Ⅱ不動産評価額(不動産価格)の上昇について

前提として下記の2つが言える。

①建物価格は購入後必ず古くなるので、建物価格は年々下落する

②土地価格は周辺の賃料や再開発等によって上昇や下落がおきる

③その他

①については大前提なので、説明を省略する。③については長くなるので次回以降説明する。

②において重要なことがある。

土地価格が上昇するには複数の要因があるが、一般的に多いのが

1.周辺の賃料上昇による地価の上昇(収益還元法・取引事例法)

2.再開発等により、繁華性、利便性の上昇があり、その結果、需要が高まり不動産価格が上昇する。当然周辺の賃料も上昇する。(取引事例法・収益還元法)

例えば、北海道や大阪などで観光客が増え、周辺の店舗の賃料が上昇し、不動産価格が上昇する。これは上記の1に該当する。

対して、交通インフラの再整備や地下鉄の延伸や新駅、新しい道路や商業施設の誕生により地価が上昇するこれは上記の2に該当する。

それではこの上記1と2においてどちらが不動産価格の上昇に安定性があるだろうか。

これは2021年 令和3年の地価公示をみてみよう。まず、令和3年の地価公示だが、令和2年にコロナウィルス感染症により、東京においても地価の下落がおきた。令和3年においても変動率は大きく上昇したが、依然商業地の賃料下落や空室率はコロナ禍以前ほどは回復していないことを前提に下記を見ていただきたい。

(国土交通省 地価公示より)※()で記されているのは前年の変動率である

上記をみると、東京大阪の最高価格は下落している。こちらはコロナ禍において、賃料下落が主な原因である。対して、下記をみると、同じコロナ禍であっても地価は上昇している。地価の上昇原因は全てインフラの整備、つまり再開発によって地価が上昇している。

(国土交通省 地価公示資料より)

次回は実際に過去におきた再開発によってマンション価格がどのように変わってきたかをみる。

【まとめ】不動産価格は、建物の築年数によってだけで決まらない。

地価の上昇や取引事例、収益性によって総合的に判断される。地価の上昇については、賃料の増加、再開発等で起きる。中でも再開発によってもたらされた地価上昇は安定的である。